夕方ごろ。
仕事をしてたら、窓の外から盆踊りの音が聞こえてきた。
今夜は職場の近くの公園で、盆踊りをやっているようだ。
残業しながら盆踊りの音を聞いてると、だんだんとうずうずしてきてしまって、ついぞ耐えきれず、仕事を切り上げて盆踊り会場へ向かった。
結構な人出ですごく賑わっていた。
会場についてさっそく自分も踊る輪に入って、盆踊りした。
浴衣の人が多い中、ワイシャツにリュックしょったままだった。
踊りも見よう見まねだったけど、楽しかった!
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今でこそ一人で盆踊っちゃうほどになったけれど、ほんの数年前までの自分からは考えられない姿である。
そう、私は盆踊らない人だったのだ。
そんな私を盆踊る人間にしたのは、うちの奥さんの影響によるものだ。
~盆踊りの思い出~
奥さんと一緒に暮らしはじめて最初の夏に、近所の神社で開かれた夏祭りに二人で行った。
奧さんは浴衣を着て、自分は浴衣を持ってなかったので私服だった。
夏休みで週末の夜ということで、祭りは結構な人出で賑わっていた。
会場のちっちゃい境内には、ちょっとした屋台と、盆踊りの櫓があった。
でも、盆踊りをしてるのはほとんどいなかった。
櫓とその周辺で、婦人会のご婦人方が数人踊っているだけ。
まあそんなもんだろうなと思って会場を眺めていたら、うちの奧さんがさっそく「盆踊りやってる!躍ろう!」と言い出した。
まじか!躍るのか!と若干引きつつ、自分はいいよと辞退したら、彼女は「ええ~」と言いながら一人で踊りの輪に入っていった。
恥ずかしくないのだろうか、僕には無理だ…という旦那の思いを余所に、彼女はなんとも楽しそうに踊るではないか。
しかも踊りを知っているわけでもなく、周りの人を見よう見まねで踊っているので若干ぎこちない。
それでも楽しそうな弾ける笑顔を見て、ああこの人はすごいなと思った。
戻ってきて彼女は「楽しかった!一緒に踊ればいいのに」とケロリと言うので、ちょっと来年は踊ってみるのもありかも……と思うようになった。
その翌夏。
再び同じ夏祭りにて。
今度は私も勇気を出して、盆踊りの輪に入ってみた!
どきどきしてたけど、踊り出してみると、あれ、なんか……
たのしい?!
もちろん、踊りなんてわからないから、上手に踊ってるご婦人方をまねして踊るわけで。
大して踊れてるわけじゃないんだけど、でも別にそれを誰がとがめるというのだろう!
なんていうか、盆踊ろうという者に対して、ここは常に開かれていたのだ。
なんというやさしさなのだ……
いつかどこかで聞いたことあるような、なんとか音頭のノスタルジックさ。
ゆっくりとした動きなのに、真似できそうで初見ではなかなか真似できない振り付けに、いつも使わない脳みそフル回転。
踊るにつれてどんどん快楽物質が出ているようだ。
同じ阿呆なら踊らにゃ損とはよく言ったものだ。
楽しい、盆踊りは楽しいぞ。
そのときの盆踊りではさらに、一緒に踊ってたご婦人から、踊ってくれてありがとうねとお礼を言われた。
僕らみたいな若夫婦(とくに男性)は全然踊ってなかったから、参加したことで喜んでもらえたようだ。
こっちもそう言ってもらえてうれしかった。
すっかり盆踊りに目覚めた私は、その翌年ももちろん夫婦で夏祭りに参加した。自分は浴衣を新調した。
その年、ひとつおや、と思ったことがあった。
盆踊りに参加している人が過去と比べて多いような気がしたのだ。
もしかしたら自分らが去年参加したことで、踊ってみようと思った人が増えたのかしら、なんて思ってみたり。
まぁ気のせいだと思うけれど。
というわけで、盆踊りといえば、これら3年間の記憶が一気に思い起こされるのだった。
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実は今住んでる川口に引っ越してから、盆踊りに参加していない。
なので、今年はどこかイベント探して、また奥さんと盆踊ろうと思っている。
(2019/7/25 note「盆踊りの思い出」より)