【分析】少年 ~世にも奇妙な物語 ’18春の特別編より~(2018/05/12)【ドラマ】

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5月12日に放送された、世にも奇妙な物語 ’18春の特別編の、「少年」というドラマが自分的にすごくヒットしたので、#観察スケッチの派生版として、物語分析してみました!

■ドラマ概要

世にも奇妙な物語 ’18春の特別編(2018/05/12)

「少年」

<キャスト>
岡林 遥:倉科カナ
青年:健太郎
少年:高村佳偉人

<スタッフ>
脚本:橋部敦子
演出:城宝秀則
編成企画:稲葉直人 狩野雄太
プロデュース:植田泰史 中村亮太

<あらすじ>
上司に見合いを持ちかけられるも恋人がいるからと断ってきた一人暮らしのOL岡林遥(倉科カナ)は、とある交通事故を目撃してしまいます。被害者は少年。病院で目を覚ました少年は「田山啓輔」と名乗りますが、看護師が田山家に電話をかけると「啓輔は死にました」と告げられます。看護師がもう一度名前を尋ねると少年は「間違えました。亮太です」と答えます。一方、家に帰った遥のもとには無言電話が…。そんなある日、遥が退社しようとすると会社の前に少年がいるのを見かけます。別の日、ベランダから見下ろすと、そこに見上げている少年が…。さらに遥が買い物をしていると、雨の中、わざわざ少年が忘れ物を届けにやってきました。びしょ濡れの姿を見かね、少年を家に招き入れる遙。ところが彼女が目を離した隙に少年は彼女の私物を確認し始め…。

(引用元)
https://www.fujitv.co.jp/kimyo/2018051201-2018051204.html#num2018051203

※※以下ネタバレ含みます。あと長いです※※

■分析もくじ

  1. ドラマ全体の(あんまり荒くない)あらすじと構成
  2. 抽象度を上げた構成
  3. ラブストーリー的構成
  4. 三幕構成
  5. 三行でいうとどうなるか
  6. 一言でいうとどうなるか
  7. どういうところがおもしろいと感じたか
  8. 参考資料
  9. 最後に

■1.ドラマ全体の(あんまり荒くない)あらすじと構成

<オープニング>

主人公・遥が、少年の事故を目撃する。
病院で目を覚ました少年は「田山啓輔」と名乗るが、看護師が田山家に電話をかけると「啓輔は死にました」と告げられる。
――タイトル――

<人物紹介>

実家の母から荷物を受け取る遥に、公衆電話から電話がかかってくる。
病院から少年がかけていたが、無言で切る。
切れた携帯の画面を見つめる遥。
部屋には恋人の写真を飾っている。
病院で、看護師にもう一度名前を尋ねられた少年は、「間違えました。亮太です」と答える。

翌日会社で、遥は上司から見合いをすすめられるが、恋人がいるからと断る。

<状況設定(ストーリーの始まり)>

その日、退社しようとする遥は、少年に見つめられていることに気づく。
(=ターニングポイント1)
別の日、ベランダから見下ろすと、こちらを見上げている少年に気づくが、いつの間にかいなくなっている。
また別の日、スーパーで買い物をしていると、少年の気配がしたので追いかけるが、いなくなっている。
遥の不安がつのる。
その買物の帰り道、雨の中、少年がついてくる。
意を決して話しかけると、忘れ物の商品を渡される。
礼を言って別れようとするが、雨の中去ろうとしない。
しかたなく自分の部屋に上げて服を乾かしてあげる。
遥が目を離したすきに、少年は彼女の部屋をあさり始める。
ペアのカップや、おそろいのパジャマを発見し、彼女のバッグをあさってスマホを取りだし、ロックを解除してお気に入り写真の彼氏とのツーショット写真を発見する。
帰る少年が靴を履くとき、靴ひもの結び方がほどけにくい結び方をしていることに気づいた遥。
返さなくていいと言って傘を渡して少年を帰す。
部屋を出た少年は一人彼女の部屋を見上げていた。
――CM――

<展開>

翌日、遥が帰宅したら部屋の前で傘を持って少年が待っていた。
傘を返し終わっても帰ろうとしない少年。
お腹が減っていることに気づいた遥は、ご飯を少年に作ってあげる。
喜んで食べる少年。
おいしいというが、遥は謙遜する。
遥さんが作ってくれたからおいしいんだよ、という少年のセリフに動揺する。
なぜか遥の名前を知っていた。
少年は良太と名乗り、年齢は9歳だった。
いろいろ聞きたいことがあったが、少年は詳しくは語ろうとしない。
だが、無邪気に食べる姿をほほえましく思い見つめる遥。
食後、皿洗ってる彼女がふとみると、ペアのカップを持っている少年。
触らないで!というが、少年はカップを割る。
狼狽する遥に対して、本当は彼氏なんていないんじゃないのかと告げる少年。
パジャマやスマホパスワードが彼氏の誕生日であることも知っていた少年に、なぜ知っているのかと恐怖する遥。
遥!と名前を呼ぶ少年に対して、出て行って!と遥が叫び、少年は出て行く。
――CM――

<盛り上がり>

田舎の単線電車から降りる遥。
仏壇の前で手を合わせる遥。
遺影は恋人の啓輔の姿だった。

11年前の回想。
電話で啓輔の内定合格を聞かされ喜ぶ遥。
しかしそれが大阪の会社であることを知り、相談もなく決めたことに腹を立てた遥は、啓輔の話に耳を貸さず、もう会わないと言って電話を切る。
啓輔は慌てて部屋を出て、夜道を自転車で遥の元へ向かったが、その途中でバイクと衝突して帰らぬ人となった。

啓輔の母から、今回で最後にしてほしいと告げられる。
しあわせになってもらいたいから、もう十分である、啓輔もそう望んでいるはずと言われる。
そういえばと、先日病院から、変な電話があった話を聞かされる。
啓輔が事故で病院に運ばれたという内容。
それが9歳の男の子であったことを知った遥は、少年を探しにいく。
(=ミッドポイント)

少年のこれまでのしぐさや会話が、かつての啓輔のしぐさや会話とかぶる。
やっとみつけた少年を、啓輔と言って呼び止める遥。
啓輔と呼ばれて振り返る少年。

<クライマックス>

少年は啓輔の生まれ変わりであり、事故によって前世の記憶がよみがえったのだと知らされる。
いくつかの質問で、少年が啓輔であることを確信した遥には、少年は啓輔の姿に見えている。
啓輔は、かつてケンカの原因になった、大阪の会社へ行くことを決めた理由は、遥の親への気持ちを思ってのことだったことを話す。
遥は、啓輔の気持ちを知り嬉しく思うが、今は少年の姿であることにあきれる。
それでも、これからもこうして会えることを期待したが、あくまで自分は良太であり、記憶もいつ消えるかわらないので、もう会えないと告げられる。

啓輔が死んでからずっと抱えていた気持ちを吐露し、今後は自分を大事に生きることを約束し、二人は抱き合う。(=ターニングポイント2)

離れると、姿は少年になっており、彼から啓輔の記憶はなくなっていた。

<結末>

その後のある日、公園でサッカーをする少年を見つけた遥。
ほどけた靴ひもを結ぼうとする少年を見つめる。
少年は普通に靴ひもを結んでサッカーに戻る。
それを見て少し微笑み、再び歩き出す。
(=主人公の成長)

■2.抽象度を上げた構成

<オープニング>

少年の謎

<人物紹介>

欠落を抱えた主人公

<状況設定(ストーリーの始まり)>

謎の少年が接触(失ったものの変化した姿)=ターニングポイント1
疑問・不信・不安→保護 別れ

<展開>

再会 気を許したところで、主人公の不可侵を踏みにじられるショック
見て見ぬふりの欠落を見せつけられる 拒絶

<盛り上がり>

回想 欠落の記憶
誤解を解くピース =ミッドポイント
彼を探しに行く
再会

<クライマックス>

種明かし 誤解が解ける
変化を受け入れた矢先の別れ
ずっと抱えていた気持ちを伝える それによる解呪=ターニングポイント2
本当の別れ

<結末>

こっそりと再々々会
名残あるかと思わせといてない
受け入れて別々にあるいてく=主人公の成長

■3.ラブストーリー的構成

出会い
悪印象
意外といいじゃん 気を許しだす
理解できない行動 勘違い 受け入れられない 別れ
自分の欠落について確認
第三者による誤解を解くカギ
再会
告白
別れ
意外な結末

■4.三幕構成

ある(序)→ない(破)→あると思ったけどやっぱない(急)

目的のどんでん返しのひとつ、あるない型でもある
・ある・・・彼氏がいるように装っている
・ない・・・実は彼氏は11年前に事故死していた
・あると思ったけどやっぱない
___・・・少年は彼氏の生まれ変わりだったが、その記憶も消えてしまう

■5.このストーリーを三行でいうとどうなるか

死んだ彼氏を忘れられない主人公が、彼氏の生まれ変わりである少年と出会う。
少年の正体に気づいた主人公は、ずっと抱えていた想いを彼氏に告白する。
少年から彼氏の記憶は消え、少年と主人公はそれぞれの人生を歩む。

■6.一言でいうとどうなるか

ホラーテイストのラブストーリー
解呪の物語=和解の対立軸の解消
目的のあるない型どんでん返し

■7.どういうところがおもしろいと感じたか

情報の出し方、見せ方、演出がすごくよかった

これは分析してみてさらに理解が深まったところであり、ほんとに勉強になるなと思ったことです。

・人物紹介の情報の入れ方

よくできてるドラマや映画は、冒頭の人物紹介の情報量がめちゃめちゃ多いものです。
主人公が最初に母親からの荷物を受け取るシーンは、かつて恋人に話していた親に対する思いの伏線です。
無言電話を切ったあとスマホ画面見つめるシーンでは、見えてないけどこの状態ってスマホの待ちうけを見ているはずで、そこには彼氏とのツーショット写真が写っているわけで、ここで彼氏にいまだ執着している心の内が表現されています。しかもそのカットの後ろには、ピントあってないけどツーショット写真入った写真立ても写っていました。このさりげなさ!

・ホラーテイストの演出

なんだろうと興味を抱かせて、その答えを見せるというカット割りというか画面構成が、なるほどそうやるのねと思いました。
こういうふうにカット割ると、ここに意識がいくんだなとか、こうすると不安が掻き立てられるんだなとか。
前からなんとなく思っていたのだけれど、ホラーは特に見せ方ってセオリーがあるぽいなと。なんとなくそのへんが感じ取れたと思いました。

ホラー×ラブストーリー

3.で示したように、お話の抽象度を上げていくと、ラブストーリーの構成が浮かび上がります。
お話の前半は、上述の通り割とホラーな演出になってて少年の不気味さを醸し出していますが、後半は一転して少年の正体に気づくことで、伏線回収の快感を抱かせつつ、前半の不気味さが一気にせつなさに変換されます。
このギャップというか相転移というか、実はラブっていう仕組みは鉄板ですね。

呪いをかけた本人による解呪=和解の対立軸の解消

うちの奥さんともよく一緒に映画や漫画をみては、よく語りあったりするのですが、彼女が提唱したもので、「呪いをかけた本人によって呪いが解かれる」という構造があります。
このドラマは、まさにその構造にはまっていました。
見方、捉え方のひとつとして、これは割りと使えそうだなと思います。
ちなみにこれは、言い方かえると、和解の対立軸の解消にあたるんだなと後から気づきました。

意外な結末がすごく粋であり、かつ主人公の成長も表現している

ここがこのドラマの良作たらしめてるとこだと思っているのだけれど、少年の靴ひもの結び方が、かつての恋人と同じ結び方をしていたことで、少年に彼を見出していた主人公ですが、クライマックスで本当のお別れをした後、再び少年が靴ひもを結ぼうとする場面を目撃します。

ここで、主人公と視聴者はほぼ同じ気持ちで少年の結び方を見るわけです。
もしかしたら、まだ彼の名残があるのではないかと、ちょっと期待してるわけです。

その期待を裏切るように、少年は普通に靴ひもを結んで、サッカーに戻っていきます。
それを見た主人公は、これで本当に彼はいなくなったんだと認識します。
そして、少し微笑んでまた歩き出します。

これにより、彼女が彼の死を受け入れて、前を向いて生きて行こうとしていることを、見ているほうは感じ取れます。

結ぶかなと思わせといて、結ばないっていう締め方。
お話全体もそうなのですが、構成として「ある」と思わせといて「ない」っていう構成であり、あると思ってたものがないっていうのは、とてもせつないです。

それを最後の靴ひもシーンで、あるかなって期待持たせて、やっぱりないってやるのは、せつないんだけど、でもそれを受け入れている主人公がいて、どこかすがすがしいっていう、なんとも粋なんですよ!
本当に美しい終わり方でした。

ちなみに

このドラマの脚本を担当されたのが橋部敦子さんというシナリオライターで、代表作は『僕の生きる道』などの『僕シリーズ』があります。
なるほどさすが、納得の職人技だと思いました。

■8.参考資料

3年でプロになれる脚本術(尾崎将也 著)

脚本家・尾崎将也さんのご本で、これほんとに良書です。
分析の作法はいちおうこれをベースにしています。

下記は尾崎さんの提唱の構成です。
人物紹介→状況設定→展開→盛り上がり→クライマックス→結末

これって、ドラマの分析に適していると思いました。CMの入りが構成の分かれ目に挿入されているようでした。

今回でいえば、下記のようになっていると読み取りました。
人物紹介+状況設定/CM/展開/CM/盛り上がり+クライマックス+結末

あらすじドットコム

http://www.arasuji.com/

もう10年くらいお世話になっています。私のお話作りの基礎はここで学びました。基礎講座だけでも「え、無料でこんなに教えてもらっていいの?」てくらい充実してます。

■9.最後に

画面構成とかカット割りとか、前より意味が読み取れたのは、観察スケッチのおかげかなと思いました。
漫画だとこうやってコマ割りしたらいいのかと勉強になりました。
映画をネームに起こしてみると勉強になるっていうのは、本当なんだなと実感しつつも、これ2時間やるのかなりハードだなと思いました。
模写にしろ分析にしろ、30分までのドラマが結構ちょうどいいのではないかと感じました。

分析してみて思ったのが、どうも話を端的に具体的にまとめるってのが苦手で、書きすぎるか抽象度上がりすぎるかどっちかになってしまいがちだなと。
これって絵でいうところの、迷い線が多い状態だと思ってて、より把握できたらもっとすっきりするのかなとか思いました。

とはいえ、ちょっとがんばって書きすぎた感は否めません。
主に作業は休みの日だけでしたが、それでも3週間かかってしまいました。
ここまでやるくらいなら、もっと好きなように・書けるように書いたほうがいいんじゃないかと思いました。

かつて100本やろうとした映画分析が頓挫したのも、この辺の苦手意識が原因でした。

もうちょっと楽しんでやろうよ。

P.S.ちなみに

実は倉科カナさんのファンだったのですが、このドラマで再燃しまして、いつか買おうと思いつつ買ってなかった彼女のDVDを、一気買いしちゃいました。
眼福眼福(*^ω^*)

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