前記事で触れた、曲線を描くのに適した画材、の話です。
結論から言うと、ボールペンでした。
それも油性ボールペンじゃなきゃダメでした。
自分の描き方に合っていたこと
自分の線の作り方は、ペンで一発でぐいーと描くのではなく、なんどもペンを往復させる描き方です。
というか、一発で描くか往復させて描くか、しかないと思うのですが。
問題は、この描き方をペンでできるか、ということなのです。
自分はやたら往復させちゃうほうで、そうやって描かれた線を分析すると、
薄・細 → 濃・太
という構成になっています。
これを例えば、墨汁使ってGペンとか、デジタルのペンツール使って再現しようとしても、薄・細の部分でわりとくっきり筆致が残って、結果線が汚くなってしまうのです。
もしくは、薄・細部分を抑えようと意識するあまり、描き方は一発描きに近くなって、線の精度が落ちてしまうのです。
いっそえんぴつでいいじゃんと思ったときもありました。
でもやっぱり、ペンを入れることで絵が立ってくるというか、なんかぐっと良くなる、って感じがいいんです。
そこで発見したのがボールペンでした。
ボールペンは構造上、一回の筆致でもマックス濃度にはならないし、細描きも可能なので、薄・細→濃・太の描き方が再現できたのです!
ちなみにこれができるのは油性ボールペンであって、水性とかゲルインクだと、インク性質が普通の墨汁とかのインクと似ててさらさらしてるので、薄・細描きができません。
というわけで、萌管イラスト2枚目以降は、ほとんどボールペンで描いていました。
なにより、人物を描くときにも重宝しました。
ボールペンがペン入れに使われない理由と、それをカバーする手法
ボールペンがタブーとされる理由
商用原稿でボールペンを使用するのはタブーとされてきました。
たしかに自分もかつて「プロになりたいならペン入れはボールペンじゃダメ、ちゃんとペン入れしなさい」という話はよく耳にしました。
でもなぜダメなのでしょうか?
wikiでボールペンを調べると、「油性ボールペンは印刷段階で線が飛んでしまう」との記述がありました。
参考:ボールペン – wiki
ざっと調べてみたのですが、
油性ボールペンのインクはいろんな色を混ぜて黒に見えるようにしているので厳密な黒ではない
→なので墨汁とかの黒と比べると薄い黒である(2値化による減色)
→印刷に出にくい(飛んでしまう)
のではないかと考えました。
あとボールペンの構造として、一発でマックス濃度が出ない、即ちかすれやすい、ということも、印刷で飛びやすい原因なのではないかと考えられます。
ボールペンの種類とペン入れにおける主な特性について
主な種類について
- 油性ボールペン(染料インク)……かすれる、タッチつかない、耐光性ない(退色する)、黒じゃない(2値化で減色する)、ボテ(液だまり)
- 水性ボールペン(顔料インク)……タッチつかない、にじむ(ミスノンが使えない!)
- ゲルボールペン(顔料インク)……タッチつかない
※顔料インク……耐光性、耐水性に優れる
※染料インク……耐光性、耐水性に劣るが、発色がよい、色数は豊富
参考
・日本筆記具工業会 – ボールペンのインキについて
・uni – お客様相談室:油性・水性・ゲルインクの違いは何か
・uni – お客様相談室:油性と水性、染料と顔料の違いは何か
油性ボールペンというのは、いわゆるふつーのボールペンで、よく売ってるやつです。
そんで今回、自分が使ったやつが、油性ボールペンでした。
この比較を見ると、油性ダメじゃん!と思われるかもしれないけれど、決してそんなことはありませんでした。
油性ボールペン問題の対処法について
○まず、かすれる、タッチがつかない問題については、描き方でカバーです!
自分は何度も線を重ねるので、むしろ多少かすれたほうが、グレー部分すなわちアンチエイリアス部分となるから、結果なんかよく見える!という効果が生まれるのです。
○経年による耐光性についても、工程的に描いたらすぐスキャンするので問題ありません。
○あと黒じゃないこと。
2値化による減色については、閾値をいじって調整します。
せっかくのアンチエイリアス部分が消えてしまい、線がジャギる(縁がギザギザになる)リスクはあるものの、そもそもの絵としての線の精度が、他の手法の精度よりも断然高いので、多少のジャギは気にしないことにしています。
スキャン時の解像度を上げることで、線の劣化を抑えるという手法もあります。
(ていうか、カラー原稿ならそもそも2値化する必要なかったじゃんと、今気付きました)
○ボテについてはどうしようもないので、左手にティッシュをもって、こまめにペン先をふきとる他ありません。
なんだか普通のペン入れよりめんどくさいことしてるかもですけど、自分にとって今回のアナログ描きは、ボールペンのおかげではかどりました。
なんとかとハサミとボールペンは使いようなのです!
※
ただし、これはあくまで「線を作る」という描き方なんですね。
「描く」ということに関しては、ちょっと向いてない気もします。
一枚絵だったからよかったものの、漫画でこの描き方はめんどくさい気もします。
ボールペンペン入れ法について、そのうち改めて検証してみようと思います。
まとめ
アナログとデジタルのいいとこどりで、効率よく!
条件を満たしつつ、自分にとってストレスの少ない手法でやっていければいちばんいいんじゃないかなーと思います。
ちなみにこの手法が一般的(?)にどうなのかは、あえてググってないので不明です。
とりあえず自分は良かったということで。
ボールペンはえんぴつです!(どーん)