【掌編小説】キレそうなやつ(402文字)(2010.02)

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キレそうなやつ   作・藤川S

 

彼女の前では明るくしてるけど、別にネアカってわけじゃないんだ。一人の時なんかは結構暗いんだぜ。だから、ずっと明るくしていると疲れてきちまうんだ。彼女は俺が明るくしているのが当たり前だと思っているから、それで段々とイライラしてくるんだ。

最近は、彼女が帰って来ても、すぐに明るく振舞うのはやめた。ちょっと暗い顔をして見せるんだ。すると、彼女は決まって俺に嫌な顔を向けるんだ。だから俺は取り繕うように、明るく笑顔を見せてやる。なんだよ、イラついているのはこっちの方なのに。

今、俺の機嫌は相当悪い。瞬きが多くなっているのがその証拠だ。そんな俺に対して、彼女もイライラしているのがわかる。

彼女はついに我慢しきれなくなって部屋を出て行った。そしてあろうことか、彼女は、“俺の代わり”と一緒に帰ってきやがった!

この仕打ちに、ついに俺はぶちキレた。

 

カチン!

 

「あ、蛍光灯取り替える前に切れちゃった」

 

(おわり)